業務でプレゼン資料や社内資料を作成する際、イラストや写真などの素材を活用したことがある方も多いのではないでしょうか?インターネットを検索すると、「ロイヤリティフリー素材」、「無料写真素材」、「フリー素材アイコン」といったサイトがたくさんヒットします。無料で使えるこれらの“フリー素材”も、かなりレベルの高いものが出てきており、イメージにぴったりのものが見つかることも多くなってきました。
これらの“フリー素材”サイトからダウンロードしたイラストや写真を使用して資料を作成した場合、著作権の問題が発生することはないのでしょうか?本コラムでは“フリー素材”の安全性について解説します。
■そもそもフリーとは?■
「フリー」を辞書で引くと、自由、無所属、無料などの説明が出てきます。耳に心地よく、大変便利な言葉なので、宣伝文句や広告などでよく使われますが、果たして“フリー素材”は何がどのように“フリー”なのでしょうか? まさにここが問題であり、深く考えないで、何でも自由にできる、と考えていると多くの落とし穴があるのです。
■商用利用禁止■
多くの“フリー素材”には、使用ルールが定めてあります。フリーというからには原則無料であることは期待できるとしても、どんな使い方をしてもいいというわけではありません。例えば「商用利用」を禁止しているものがあると、個人で趣味の文書に“フリー素材”の写真をコピペして使っても大丈夫ですが、一般的には企業のHPに使うことはできないでしょう。
では、NPO法人ならいいのでしょうか? あるいは、企業のHPでも“無料”で公開しているサイトの利用ならいいのでしょうか? さらには、個人のブログなら本当に大丈夫でしょうか?
これらはすべてリスクがあります。たとえNPO法人であっても、売上も立って利益も上がることもあるでしょうし、株式会社とやっていることも似ているわけで、NPO法人だからと言って完全にセーフとは言えないでしょう。また、企業が“無料”で公開しているHPであったとしても、それは紛れもなく企業の広告、広報であり、しっかりと企業の営業に貢献しているので「商用利用」ではない、とは言い辛いはずです。さらには、個人のブログであっても、広告でアフィリエイト収入を得ていたらどうでしょうか? しっかり「商用利用」しているといわれるかもしれません。
このように、「商用利用」が禁止されている場合は、上記のようなものもリスクがあると思ったほうがよいのです。
■クレジット表示■
別の例として、使用する際には、著作権者の表示(クレジット表示)をしてください、というものもあります。これは、コピペして使ってもいいけど誰の“作品”なのかが分かるようにしてほしい、ということです。
様々な目的や背景事情があってこのような制限がかけられているのだと思いますが、例えば写真をコピペして使った場合、誰が提供した写真なのかが分かるようにしてほしい、というのは、写真を提供した人のプロモーション(露出)につながるから、という事情も考えられるでしょう。
このような場合は、ありがたく使わせていただいたお礼に、その名前や出所が分かるようにしておくとよいでしょう。
■改変禁止■
これもよくある制限の一つですが、コピペは良いけど編集しないでね、ということです。写真やイラストはそれ自体が一つの作品であり、一部に手を加えられるとイメージが変わることもありますし、意図しないものに変化してしまうこともあるでしょう。特にクレジット表示をしたうえで改変された場合には、権利者自身が誤解を受けたりすることもあるでしょう。
■再配布禁止■
ちょっと難しいですが、「再配布」が禁止されている場合は、権利者のサイト等から、直接のコピペは良いけど、それをコピー元としてさらにコピペさせないでください、ということです。
これも様々な目的や背景事情があるはずですが、例えば、コピペを繰り返すと転々と流通するうちに改変されたり、意図しない反社会的なサイトに使われたり、といった権利者のコントロールが及ばない行為が捕捉できなくなる、ということもあるでしょう。
■素材自体の問題■
これはかなりトリッキーな話ですが、“フリー素材”として提示されている作品は、その権利者自身はフリーで使っていいですよ、と言っているわけですが、仮に、その権利者自身が他人の作品を勝手に流用してその作品を作っていたとしたらどうでしょうか?
あまりそこまで考えたことはないかもしれませんが、コピペや編集を繰り返して転々と流通している作品の中には、ひょっとしたら、過去に著作権違反をして作られたものが入っているかもしれない、ということです。それは“フリー素材”です、といって提示されている作品とて例外ではありません。
そうすると、“フリー素材”の権利者自身が信用足りえるか?というところも、最終的には重要になってきます。特にインターネットとコンピュータの普及により、ディジタル作品のコピペや編集がたやすくできることは、大きな利点でもあり、新たなリスクの元でもあるのです。
■クリエイティブコモンズ■
ネットで「Creative Commons」を引いてみると、米国のCreative Commonsという団体のHPに多くの作品が検索可能に提示されているのが分かります。
このサイトでは、「クリエイティブコモンズライセンス」(CCライセンス)という4種類のライセンスルールを組み合わせてできる全部で6種類のライセンスルールの元、すべての作品の利用がなされるようになっています。
日本においては、特定非営利活動法人コモンスフィアという団体が同様の活動を行っています。
https://creativecommons.jp/about/
クリエイティブコモンズライセンスの種類:
表示:作品のクレジットを表示すること
非営利:営利目的での利用をしないこと
改変禁止:元の作品を改変しないこと
継承:元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること
https://creativecommons.jp/licenses/
詳細は上記のページに譲りますが、分かりやすいマークで、どのようなルールで使えるのかが一目で分かるようになっています。
現時点で広く普及しているとは言えないかもしれませんが、インターネット時代に、その利点をできるだけ殺すことなく、著作活動が活発に行われ、かつ、無法地帯にならないようにしよう、という試みとして注目に値します。
■“フリー素材”はフリーでないかも?■
このように“フリー素材”を切り口に見てくると、著作権ルールの趣旨や奥深さが見えてくるとともに、その複雑さに戸惑う人も多いのではないでしょうか。「CCライセンス」のような先進的な試みもなされているものの、現時点では、簡単に、安全に、著作物を利用できる環境は未だ発展途上、というところです。
今回の“著作権侵害無料簡易判定サービス”も、このような未完成な著作権の世界において、少しでも安心して活動していただけるような世界を作る一助となれば、という思いで始めたものです。
最後までお読みいただきありがとうございました!