音楽の著作権とは?サブスク時代の印税・著作権使用料を解説 | 著作権侵害判定サイト

音楽の著作権とは?サブスク時代の印税・著作権使用料を解説

Ongaku chosakken 著作権

インターネットが身近になった現代では、音楽、映画、小説、アニメなどさまざまなコンテンツに触れる機会が爆発的に広がりを見せています。

なかでも注目したいのが、Apple MusicやAmazonプライムビデオ、ネットフリックスといったサブスクリプション・サービスの登場です。これらのサービスが身近になることで、さまざまなコンテンツにおいて、ジャンルや世代の垣根が急速に取り払われています。

実際に、サービスを利用していて「いままで興味がなかったけれど、気まぐれにチョイスしてみたらとても素晴らしい作品だった」という体験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

サブスクリプション・サービスに見る著作権

subscription

サブスクリプション・サービス上で公開されているさまざまな作品には、一つひとつ「著作権」が存在します。

「著作権」とは、なんらかの思想や感情を込めてつくった作品に発生する権利です。「著作権」は作品そのものの有名・無名を問わず、すべての作品が誕生した瞬間に発生するとされています。特許権とは異なり、登録にいたるまでの手続きや申請などは必要ありません。

また、それらの作品を「著作物」と呼び、「著作物」を産み出したクリエイターやクリエイターの所属する会社などが「著作権者」にあたります。

サブスクリプション・サービスの配信事業者は、音源(原盤)の権利者やJASRACなどの著作権管理事業者から許諾を得たうえで「著作物」を配信し、使用料を支払っています。

使用料は、あらかじめ定められた使用料率をもとに楽曲のリクエスト実績に基づいて算出され、それらが「著作権者」や著作権管理事業者などに分配されるのです。

サブスクリプション・サービスにおける印税収入

音楽系のアーティストを例にあげて考えてみましょう。彼らは、原盤権を持つレコード会社や事務所との間に原盤契約を結んでいます。

原盤契約

アーティストは原盤の権利者から提示され、同意した印税率をもとにサブスクリプション・サービスにおける使用料を受け取るのです。印税とは、「著作権者」が「著作権使用料」として得られる金銭を指します。

「税」の字が入っているので誤解する人がいるかもしれませんが、税金ではないので、国や自治体が決めるものではなく、当事者同士の契約(合意)により支払いの方法や料率や金額などが決められます。

ここで注目したいのが、印税と一言にいっても、それらのすべてがアーティストの収入となるわけではないことです。

前述のとおり、「著作権」とはなんらかの「著作物」をつくった「著作権者」に付与されます。音楽でいえば、「著作物」である楽曲の作詞や作曲を行なった人が「著作権」を持つ「著作権者」となるでしょう。

それでは、作詞・作曲家に楽曲制作を依頼し、歌唱や演奏のみを担当しているアーティストに「著作権」は発生するのでしょうか。

実は、JASRACなどの著作権管理事業者は、基本的に作詞や作曲における権利しか管理していません。そのため、サブスクリプション・サービスにおいてどれだけ楽曲がたくさんリクエストされようとも、実際に楽曲を歌唱しているアーティストには権利が発生せず、印税が支払われない可能性があるのです。

ただし、アーティストとレコード会社や事務所との間にアーティスト印税(歌唱印税)が結ばれている場合は、歌唱のみを担当しているアーティストであっても、その割合に基づいて印税を受け取ることができます。

また、編曲を担当した編曲者や、演奏を行なったスタジオミュージシャンなどがいる場合、それらの人々も契約内容次第では印税を受け取ることが可能です。

しかし、昨今では編曲家やスタジオミュージシャンは印税契約ではなく自らの権利について買い取り契約を行ない、楽曲の使用回数やサブスクリプション・サービスにおけるリクエスト回数などを問わず、事前に一定の報酬を得ているケースが多いとされています。

さらに、アーティストをプロデュースした人物がいた場合は、原盤契約の中にプロデュース印税というものも組み込まれています。このように、印税とは、さまざまな契約内容が絡むものであり、アーティスト単体ではなく役割の人々に分配されるものなのです。

これまでの音楽の長い歴史の中で、作詞家、作曲家、実演家(歌手・演奏家等)等のクリエイターの収入の得方は大きく変遷してきました。

18世紀まで、もっぱら彼らの生活を支えていたのは貴族のパトロンでした。それが、1877年エジソンの蓄音機の登場により、音楽を生ではなく、円柱の蝋管という「物理媒体」に録音して楽しむ方法が開発されました。

最初は機械式であったものが、音の溝をなぞって振動する針の動きを電気信号として増幅してスピーカーを駆動するようになり、本格的にレコードが庶民の手にわたるに至り、音楽クリエイターは「著作権の使用料」による収入の獲得が可能となったのです。

その後高々150年足らずの間に、著作権の使用料の支払い方法も大きく変化してきました。日本においては、アナログレコードの時代、1939年に著作権管理団体としてJASRACが設立され、組織的に使用料を支払う仕組みが確立しました。

JASRAC

そして、1982年にソニーとフィリップスが共同開発したCDの登場により、デジタルの時代に入ります。

オリジナルのレコードに絶対的な価値があったアナログ時代から、録音を繰り返してもコンテンツが劣化しないデジタル時代に入る際にも著作権の使用料の支払い方や料率にも大きな論争があり、1992年に私的録音録画補償金制度が導入され、特定のデジタル録音機器等について一定の補償金を支払う仕組みも導入されました。

こうしてみると、昨今のサブスクリプション・サービスの登場は、ついに音楽を「物理媒体」を介せずに直接インターネットを介して直接エンド・ユーザが楽しむことを可能にしたといえ、歴史的にも大変大きな変化であることが分かります。

こうして原稿を書いている私も今、サブスクリプション・サービスを介してスマホにダウンロードしたお気に入りの音楽を聴いています。

手元には物理的なレコードジャケットも、CDケースも何もありませんが、まさに裸の音楽そのものが、私の心をリラックスさせ、開放し、勇気づけ、一日一日を潤いのあるものにしています。

日々、私と同様に音楽を楽しんでいる人は皆、この満足感を、この音楽作品を届けてくれたすべての音楽クリエイターに届けたいと思うのではないでしょうか。

冒頭に書いた「ふとしたきっかけで思いがけず良い作品に出合えた」経験は、かつてレコード販売店に通ってレコードやCDを買い求めていた時代よりも、格段に増えているはずです。

CDとサブスクリプション・サービスに収入の差はある?

サブスクリプション・サービスの印税収入において記憶に新しいのが、2020年7月に話題になった音楽グループ『サカナクション』山口一郎さんの発言です。

サカナクション山口一郎が回答「CDとサブスクで収入の差はある?

山口さんは、レギュラーラジオ番組のリスナーから届いた「CDとサブスクで収入の差はある?」という質問に対し、サブスクリプション・サービスにおけるアーティスト印税について言及しています。

こうした収入にまつわる話題は音楽業界でタブー視されている印象があるため、放送時にはSNSを中心に大きな反響を呼びました。

山口さんは、アーティスト印税のパーセンテージが決して大きな数字ではないこと、原盤権をサカナクションではなく所属事務所とレコード会社が半分ずつ所有していることを語り、原盤権を持っていないアーティストがサブスクリプション・サービスだけで潤沢な収入を得ることは難しいという旨の話をしています。

サカナクションといえば、音楽好きにはすっかりお馴染みの存在であり、高い人気を誇るアーティストです。しかし、そんな彼らの印税における契約内容や、非常に便利な存在であるサブスクリプション・サービスの存在がアーティストの収入に必ずしもプラスになるわけではないという事実が多くの音楽好きに一石を投じました。

サカナクションの場合、自分たちでほとんどの楽曲の作詞・作曲を手がけているため、それに伴う印税を得られるはずです。

しかし、それでも決して「サブスクリプション・サービスの配信だけで満足な収入を得られる」という領域にまでたどり着かないことに少なからずショックを受けたファンも存在するでしょう。

サブスクリプション・サービスはインディーズのほうが儲かる?

それでは、サブスクリプション・サービスがアーティストにとって金銭面でマイナスな方向にしか働かないかと問われれば、答えはノーです。

前述のとおり、アーティストが受け取れる印税は、原盤権を持つレコード会社や事務所との契約内容によって決まります。

そのため、あらかじめアーティストにとって有利な契約を結んでおけば、それに準ずる印税を手に入れられることになります。多くのヒット曲を世に生み出したベテランのアーティストなどは、こういった自らに有利な契約を結びやすくなるのかもしれません。

また、前述のラジオ番組でサカナクション山口さんも語っていましたが、サブスクリプション・サービスにおいては、作詞・作曲・歌唱・演奏はもちろん、音楽活動にまつわるすべてを自分たちで行なうインディーズのアーティストが有利という側面もあります。

彼らはレコード会社や事務所に所属せず、原盤権を自分たちが保持しているため、リクエスト数に応じて得られる使用料の割合が高くなるためです。

もちろん、インディーズでありながら高いリクエストを得るためには高い人気や認知度、注目度などが必要でしょう。

メジャーアーティストの場合、それらを万全にこなすための手段として、レコード会社や事務所が役割分担しながらプロモーションやレコーディング作業などを行なっています。

しかし、インディーズアーティストの場合はそれらを自分たちのお金、能力、時間を駆使して手がけなければならないため、サブスクリプション・サービスでは収入を得られても、プロモーション費用でマイナスになってしまうといった可能性も考えられるのです。

このように、一長一短な側面もあるため、メジャーだから、インディーズだから良い悪いという話にはなりません。同様に、サブスクリプション・サービスが現状抱えている問題も、現物のCDであれば解決できるというものではないのです。

このように、サカナクションの山口さんが語ったことは、エンド・ユーザーとして彼らの音楽を楽しんでいる私たち一人ひとりへのメッセージとして、様々な意味があると思います。

すなわち、音楽作品がレコードやCDといった「物理媒体」から再び「解放」され、世界中どこにいても直接私たちのところへ届けられる仕組みが普及・定着しつつある中で、ファンの皆さんが受けた「ショック」というのは、エンド・ユーザーの「満足感」が、その作品を届けるために貢献した関係者に適切に配分されていない、と感じたことを反映しているのかもしれません。

そして偶然にも、昨今のCOVID-19の蔓延により、メジャー・レーベルの著名なアーティストもライブ・コンサートの代わりに動画配信サービスを活用するようになりました。

6月25日にサザンオールスターズが行った初の無観客ライブの動画配信イベントは、3,600円のチケット購入者が約18万人、総視聴者数は推定約50万人と言われており、大成功したといえるでしょう。

このように、インディーズからメジャー・アーティストまで、インターネットを使った配信サービスの活用は今後も進み、「著作権の使用料」の支払い方法も多様化していくでしょう。

あるいは、「著作権」といった「古臭い」概念では括ることができない「満足料」「感動料」といった新たな収益還元の方法が普及、定着していく日も近いのかもしれません。

まとめ

私たち一般ユーザーが利便性の高さから愛用しているサブスクリプション・サービスですが、現状ではさまざまな問題を抱えています。

かといって、せっかく便利なものを手放してアーティストのために一円でも多くのお金を払うことが正しいかといえば、決してそうではないでしょう。

著作権にまつわる印税問題はなかなかオープンにならないため、いますぐにすべてがアーティストにとってプラスになる事はないかもしれません。

私たちにできることは、便利なサービスを利用しながら、「素晴らしい」と思える作品に出会えたら可能な限りシェアすること、然るべき時にきちんとお金を支払うこと、そして違法ダウンロードに手を染めず正当な方法でコンテンツを楽しむことでしょう。

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